1. まずは基本:kW・kWh・kVAの違い
kW(キロワット)=瞬間の「力」
いまこの瞬間にどれだけ電力を使っているか。
例:加工中は10kW、待機中は2kWなど。
kWh(キロワット時)=積み重ねた「量」
電気代はこのkWhに単価を掛けて決まります。
例:10kWで1時間使うと10kWh。
kVA(見かけ電力)=設備の「器の大きさ」
最大負荷の目安で、契約電力の検討に使います。
平均kWに換算するには、力率(PF)を掛けます。
目安:平均kW ≒ kVA × 力率 × 稼働率
※ 力率は0〜1(例0.85)。稼働率は最大負荷に対する平均の割合。
2. カタログの見方(MC/NC旋盤)
マシニングセンタ
| 項目 | 意味 | 省エネの読み方 |
|---|---|---|
| 所要動力源(kVA) | 最大負荷の器 | 契約電力の目安。大き過ぎに注意 |
| 主軸電動機(例 26/22kW) | 短時間/連続定格 | 連続側で評価し過剰ピークを抑制 |
| 送り軸電動機(X/Y/Z) | 各軸サーボの定格 | 加減速/回生の最適化余地 |
例「26/22(30分/連続)」:省エネ検討は連続を基準に。
NC旋盤(複合含む)
| 項目 | 意味 | 省エネの読み方 |
|---|---|---|
| L側主軸 | 主軸(左)出力 | 切削条件の見直しで負荷低減 |
| R側/サブ主軸 | 副主軸の出力 | 同時運転率の管理でピーク平準化 |
| 回転工具主軸 | ミーリング用主軸 | 使用時間短縮・適正回転/送り |
複合機は同時使用率がキモ。段取り/プログラム最適化でピークを平準化。
3. 旧型 vs 最新省エネ機:数値比較
| 観点 | 旧型機(例) | 最新省エネ機(例) | 効果イメージ |
|---|---|---|---|
| 待機電力 | 2.5 kW | 1.2 kW | ▲52% |
| 加工時平均 | 12.0 kW | 9.5 kW | ▲21% |
| 月間消費電力 | 5,800 kWh | 4,300 kWh | ▲26% |
| 補機制御 | 常時ON | インバータ+自動制御 | ON時間削減 |
| 回生機能 | なし/限定 | 標準/強化 | 損失低減 |
読み方:「待機」「補機」「回生」「制御最適化」の4本柱で、同じ生産量でも電気代を下げられるのがポイントです。
4. 運用で効く省エネ(すぐできる)
① 待機の自動停止
無加工時間に自動で停止/低電力化。
「いつの間にかON」が消えます。
② エコ運転・段取り見直し
夜間電力の活用や、同時使用率の見直しでピークを平準化。
③ 補機のインバータ化
クーラント/エアの流量とON時間を最適化。
“見えない電力”を削減。
④ 加減速の最適化
過度な高速化が必ずしも得ではありません。
加工品質と電費のバランスを最適化。
5. GX(CO₂換算)と社内説明の勘所
| 削減電力量(kWh/月) | CO₂削減(t-CO₂/年) | メモ |
|---|---|---|
| 500 | 約2.4 | 排出係数0.4 kg-CO₂/kWhの例 |
| 1,000 | 約4.8 | 同上 |
| 1,500 | 約7.2 | 同上 |
社内説明のコツ:「電気代」+「CO₂削減」の二軸で効果を示すと、投資判断が進みやすくなります。
6. 機種比較チェックリスト
| 項目 | 確認 | メモ |
|---|---|---|
| 所要動力源(kVA) | □ 低め □ 標準 □ 高め | |
| 待機電力(kW) | □ 低い □ 標準 □ 高い | |
| 補機制御(インバータ・自動停止) | □ あり □ なし | |
| 回生機能 | □ あり □ なし | |
| 同時使用率の最適化余地 | □ 大 □ 中 □ 小 |
7. よくある質問
Q. カタログにkVAが載っていない場合は?
主軸(連続kW)を基準に、補機を上乗せ、効率/力率で換算して概算します。最終判断は銘板・実測が原則です。
Q. 連続と30分定格はどちらを見る?
省エネ評価は連続定格を基準に。30分は短時間ピークの余裕度確認に使います。
Q. 運用改善だけでも効果はありますか?
待機制御/補機インバータ/同時率最適化など、更新せずに下げられる項目があります。